イラストの練習を始めたいと思っても、線を引く練習、模写、デッサン、クロッキー、色塗り、人体の描き方など、候補が多すぎて何から手を付ければよいのか迷いやすいものです。
特に初心者のうちは、上手な人の練習量や完成度の高い作品を見て、自分も同じことをしなければいけないと感じてしまい、最初の一歩が重くなることがあります。
しかし、イラストの練習は難しい課題を大量にこなすことよりも、今の自分に必要な力を見つけ、描きたい絵につながる練習を小さく続けるほうが上達につながりやすいです。
この記事では、初心者が最初に押さえたい練習の順番、模写やトレースの使い方、人物や背景の練習方法、挫折しやすい原因、毎日続けるための工夫まで、独学でも実践しやすい形で整理します。
イラストの練習は何から始めるべき

イラストの練習は、最初から難しい人体デッサンや完成度の高い一枚絵を目指すより、線に慣れること、形を大きく捉えること、好きな絵を観察すること、自分で一枚描き切ることを順番に経験するのが取り組みやすいです。
検索結果でも、初心者向けの練習では線に慣れる、アタリを取る、模写やトレースで構造を見る、好きなモチーフを描くといった流れが多く紹介されています。
大切なのは、練習を上達のための苦行にせず、描きたい絵へ近づくための道具として扱うことです。
線に慣れる
イラストの練習で最初に取り組みやすいのは、思った方向へ線を引くための運筆です。
線が安定しないと、顔の輪郭、髪の流れ、服のしわ、目の形など、どのパーツを描いても仕上がりが不安定に見えやすくなります。
練習では、長い直線、短い線、円、楕円、ゆるいカーブを紙やキャンバスに何度も描き、手首だけでなく腕全体を使う感覚を確認するとよいです。
ただし、線の練習だけを長時間続けると飽きやすいため、数分だけ行ってから好きなキャラクターの髪や目を描くなど、実際のイラストとつなげることが大切です。
線は一度で完璧に引くものではなく、下描き、清書、修正を通じて整えていくものだと考えると、初心者でも気持ちが楽になります。
アタリを覚える
アタリとは、顔や体や物の大まかな位置を決めるための補助線や簡単な形のことです。
初心者がいきなり目や髪などの細部から描き始めると、片目だけ大きい、首の位置がずれる、体の向きが不自然になるなど、後から直しにくい崩れが起きやすくなります。
顔なら丸と中心線、体なら頭、胸、腰を大まかな箱や楕円で置き、手足の流れを線で示してから細部に入ると、全体のバランスを確認しやすくなります。
アタリは正解の形を暗記するものではなく、自分が描こうとしているポーズや角度を整理するためのメモのようなものです。
最初は見本のアタリを真似し、慣れてきたら写真や好きな作品を見ながら自分で簡単な形に置き換える練習へ進むと、観察力も同時に育ちます。
模写で観察する
模写は、上手なイラストや写真を見ながら同じように描く練習です。
単に線を写すだけではなく、なぜその線がそこにあるのか、顔のパーツがどの距離で置かれているのか、髪の束がどの方向へ流れているのかを考えながら描くと学びが増えます。
初心者にとって模写は、上手な人が感覚だけで描いているように見える部分を分解して理解する入り口になります。
模写をするときは、完成作品を公開する目的ではなく、自分の練習ノートとして扱い、元の作者名や参照元を記録しておくと安心です。
著作権のあるイラストをそのまま自作として投稿したり、商用利用したりするのは避け、練習と発表の線引きを明確にすることが重要です。
トレースで理解する
トレースは、見本の上から線をなぞって形や線の流れを体験する練習です。
初心者のうちは、模写では線の位置を取ることに意識を使いすぎて、なぜ上手く見えるのかまで考えられないことがあります。
トレースを使うと、線の強弱、曲線のリズム、顔のパーツの配置、体の重心などを手の動きとして確認しやすくなります。
ただし、何も考えずになぞるだけでは効果が薄く、線が太くなる場所、あえて省略されている場所、形が誇張されている場所を観察する必要があります。
トレースも模写と同じく練習目的にとどめ、公開する場合は利用条件が明確な素材や自分で撮影した写真を使うと安全です。
好きなものを描く
イラストの練習を続けるうえで、好きなものを描く時間は基礎練習と同じくらい大切です。
手や足の練習、遠近法、配色、影の入れ方などを順番に学ぶことは重要ですが、練習だけで終わると自分が何のために描いているのか分からなくなりやすいです。
好きなキャラクター、服、動物、食べ物、風景、オリジナルの人物など、自分が描きたい対象を選ぶと、苦手な部分が見つかったときにも学ぶ理由がはっきりします。
たとえば推しキャラクターの手を魅力的に描きたいから手を練習する、背景付きの一枚絵を描きたいからパースを学ぶという流れなら、基礎が作品づくりに直結します。
好きなものを描くことは遊びではなく、上達に必要な課題を自分で発見するための実践練習でもあります。
一枚を完成させる
イラストの練習では、途中で気に入らなくなった絵を消して新しい絵に移ることがよくあります。
もちろん描き直しは悪いことではありませんが、ラフだけ、顔だけ、線画だけで終わる習慣が続くと、色塗り、仕上げ、全体の見せ方を練習する機会が不足します。
完成度が低くてもよいので、一枚の絵を下描きから仕上げまで進めると、自分がどの工程でつまずくのかが具体的に分かります。
一枚を完成させた後に、線が弱い、色が濁る、体が硬い、背景が浮くなどの反省点を一つだけ選べば、次の練習内容を決めやすくなります。
毎回最高傑作を目指す必要はなく、完成までの流れを経験すること自体が、独学で上達するための大きな材料になります。
短時間で続ける
イラストの練習は、一日何時間も描ける人だけが上達するものではありません。
初心者ほど長時間の練習を計画しがちですが、疲れた状態で無理に描くと、絵に対する苦手意識や義務感が強くなりやすいです。
最初は一日十分でもよいので、線を引く、目だけ描く、手を一つ描く、昨日の絵を少し直すなど、始めるハードルを低くするほうが続きます。
短時間の練習でも、何を描いたか、どこが難しかったか、次に何を試すかをメモすれば、ただ描き散らすよりも改善点が見えやすくなります。
練習量は大切ですが、続けられない計画よりも、疲れている日でも戻ってこられる小さな習慣のほうが長期的には強いです。
課題を一つに絞る
イラストの練習で挫折しやすい人は、線、色、構図、人体、服、背景、表情などを一度に直そうとしてしまうことがあります。
一枚の絵には多くの要素が含まれるため、全部を同時に上達させようとすると、どれも中途半端に感じて自信を失いやすいです。
練習の効果を感じたいなら、今日は横顔だけ、今週は手だけ、次の一枚は光の方向だけというように、見るポイントを一つに絞るのがおすすめです。
課題を一つに絞ると、完成した絵に欠点が残っていても、今回の目的を達成できたかどうかで評価できます。
上手い絵を描くことと、練習として成長することは少し違うため、練習では小さな改善を見つけて積み上げる視点が必要です。
初心者が迷わない練習メニュー

イラストの練習を続けるには、今の自分に合ったメニューを選ぶことが大切です。
何となく有名な練習を真似するだけでは、描きたい絵とのつながりが見えず、効果を感じる前に飽きてしまうことがあります。
ここでは、初心者が取り入れやすい練習を目的別に整理し、線、形、観察、完成力のどれを伸ばす練習なのかを分かりやすくします。
目的別に選ぶ
イラストの練習は、目的を決めて選ぶと取り組みやすくなります。
線がガタガタする人と、体のバランスが崩れる人と、色塗りで迷う人では、必要な練習が同じではありません。
| 悩み | 向いている練習 | 意識すること |
|---|---|---|
| 線が不安定 | 運筆 | 腕の動き |
| 形が取れない | アタリ | 大きな比率 |
| 上手く見えない | 模写 | 配置と省略 |
| 人体が硬い | クロッキー | 重心と流れ |
| 仕上げが苦手 | 一枚絵 | 完成までの工程 |
練習を選ぶときは、苦手をすべて消すよりも、次に描きたい絵で一番困りそうな部分から取り組むと効果を実感しやすいです。
一週間で回す
初心者は、毎日同じ練習を続けるよりも、軽いメニューを一週間で回すほうが飽きにくいです。
たとえば月曜日は線、火曜日は顔、水曜日は手、木曜日は模写、金曜日は色、土曜日は一枚絵、日曜日は見直しにすると、基礎と実践を両方入れられます。
- 月曜日は線を整える
- 火曜日は顔を描く
- 水曜日は手を観察する
- 木曜日は模写をする
- 金曜日は色を試す
- 土曜日は一枚描く
- 日曜日は反省を残す
このような予定は必ず守るためのものではなく、迷ったときに戻るための目安として使うと続けやすいです。
記録を残す
イラストの練習では、描いた絵を残しておくことが上達の実感につながります。
描いた直後は下手に見えても、数週間後に見返すと線の迷い、形の取り方、塗りの変化などが客観的に分かることがあります。
日付、練習内容、かかった時間、難しかった部分、次に試したいことを短く書いておくと、次の練習を決める材料になります。
SNSに投稿する必要はありませんが、非公開のフォルダやノートに保存しておくだけでも、自分の変化を確認しやすくなります。
上達は毎日感じられるものではないため、記録によって長い目で変化を見る仕組みを作ることが大切です。
人物イラストを上達させる考え方

イラストの練習で特に悩みやすいのが、顔、体、手、ポーズなどの人物表現です。
人物は少しバランスが崩れるだけで違和感が出やすいため、初心者ほど細かいパーツに集中しすぎて全体の流れを見失うことがあります。
人物練習では、顔だけを上手く描く段階から、頭、首、胴体、手足のつながりを見て、最後に表情や服で魅力を足していく考え方が役立ちます。
顔は比率で見る
顔を描くときは、目や髪の描き込みよりも先に、顔全体の比率を確認することが大切です。
目を魅力的に描けても、鼻や口の位置、あごの長さ、耳の高さが大きくずれると、全体として不自然に見えることがあります。
| 見る場所 | 確認する点 | よくあるズレ |
|---|---|---|
| 目 | 左右の高さ | 片方だけ上がる |
| 鼻 | 中心線との関係 | 顔の向きと合わない |
| 口 | あごとの距離 | 下に寄りすぎる |
| 耳 | 目と鼻の高さ | 位置が浮く |
顔の比率は絵柄によって変わるため、絶対的な正解を探すよりも、自分が描きたい絵柄ではどの位置に置かれているかを観察することが重要です。
体は流れで描く
体の練習では、筋肉や骨の名前をすべて覚える前に、ポーズ全体の流れを捉える意識が役立ちます。
立っている人物でも、重心がどちらの足にあるか、肩と腰がどの角度で傾いているかによって、自然さが大きく変わります。
- 頭の向き
- 肩の傾き
- 腰の角度
- 背骨の流れ
- 重心の位置
細部を描く前に、一本の線で動きの方向を置き、そこに胸や腰の大きな形を足すと、硬い棒人間のような印象を避けやすくなります。
手は分解する
手は初心者が苦手にしやすいパーツですが、複雑に見える理由は小さな形が多く、角度によって見え方が大きく変わるからです。
いきなり指を一本ずつ丁寧に描こうとすると、長さや太さが合わず、不自然な形になりやすいです。
まず手のひらを大きな箱、親指の付け根を別の塊、指を細長い筒として分けると、形を整理しやすくなります。
自分の手を写真に撮って描く練習は、著作権を気にせず使える資料になるため、角度やポーズの確認にも向いています。
手は一度で得意になるパーツではないため、毎日一つだけ描く、小さく添える、苦手な角度を集めるなど、負担の少ない練習にするのが続けるコツです。
模写とオリジナルを両立する方法

イラストの練習では、模写ばかりしていてもオリジナルが描けないのではないかという不安がよくあります。
一方で、何も見ずに描こうとすると形が分からず、同じ失敗を繰り返してしまうこともあります。
模写は観察して学ぶ時間、オリジナルは学んだことを試す時間と分けて考えると、どちらか一方に偏らずに上達しやすくなります。
模写は目的を決める
模写をするときは、絵全体を完璧に写すよりも、学びたい目的を一つ決めると効果が出やすいです。
今日は髪の束の作り方を見る、今日は目の塗り方を見る、今日は肩から腕へのつながりを見るというように焦点を絞ると、観察が深くなります。
| 目的 | 見るポイント | 得られる力 |
|---|---|---|
| 線画 | 線の太さ | 清書力 |
| 顔 | パーツ配置 | バランス感覚 |
| 塗り | 影の置き方 | 立体感 |
| 構図 | 視線誘導 | 画面作り |
目的がない模写は作業になりやすいため、描き終わった後に一つでも発見を書き残すと、次のオリジナル制作へつながります。
資料を見る
オリジナルを描くときに資料を見ることは、初心者だけの補助ではなく、自然な絵を描くための重要な習慣です。
服の構造、手の角度、椅子の形、光の当たり方などは、記憶だけで描こうとすると曖昧になりやすいです。
- 自分で撮った写真
- ポーズ集
- 公式の素材サイト
- 実物の観察
- 利用条件が明確な資料
資料を使うときは、丸写しではなく、形や仕組みを理解して自分の絵に合わせる意識を持つと、模倣ではなく学習として活用できます。
自分の絵に戻す
模写や資料練習で学んだことは、必ず自分の絵に戻して試すことが大切です。
見本を見ていると描けるのに、何も見ないと描けない場合は、理解したつもりの形がまだ自分の中で整理されていない可能性があります。
模写した後に、同じポーズを別のキャラクターで描く、角度を少し変える、服だけ変えるなどの応用をすると、学んだ要素を使う練習になります。
完全なオリジナルにいきなり移るのが難しい場合は、見本の構図を参考にしつつ、顔、服、表情、配色を変える段階を挟むとよいです。
上達には観察と実践の往復が必要であり、模写で得た発見を自分の表現に変換する時間がオリジナル力を育てます。
挫折しないための練習環境

イラストの練習を続けるには、技術だけでなく環境づくりも重要です。
道具が使いにくい、練習時間が長すぎる、他人と比べすぎる、目的が曖昧なまま描いているなど、上達以前の部分でつまずくことは少なくありません。
ここでは、初心者が描く習慣を保ちやすくするために、道具、時間、心の持ち方を整理します。
道具は増やしすぎない
イラストの練習を始めると、ペンタブ、液タブ、高機能なソフト、ブラシ素材、参考書など、さまざまな道具が気になりやすいです。
もちろん道具は制作を助けますが、最初から多くそろえると、描くことより設定や比較に時間を使ってしまうことがあります。
| 目的 | 最低限の道具 | 補足 |
|---|---|---|
| アナログ | 紙と鉛筆 | すぐ始めやすい |
| デジタル | 端末とペン | 修正しやすい |
| 資料管理 | フォルダ | 見返しやすい |
| 記録 | ノート | 成長を残せる |
最初は今ある道具で始め、描きにくさの原因がはっきりしてから買い足すと、無駄な出費を抑えながら自分に合う環境を作れます。
比べ方を変える
イラストの練習で苦しくなりやすい原因の一つは、上手な人の完成作品と自分の練習途中を比べてしまうことです。
SNSでは完成度の高い絵が目に入りやすく、その裏にある失敗、ラフ、描き直し、練習量は見えにくいです。
- 昨日の自分と比べる
- 一年前の絵を見る
- 改善点を一つ探す
- 他人の絵は参考にする
- 評価数で決めない
他人と比べること自体が悪いわけではありませんが、落ち込むためではなく、取り入れたい工夫を見つけるために使うと練習の味方になります。
休む日を作る
毎日描くことは上達に役立ちますが、休まず描き続けなければならないと考える必要はありません。
疲れている日や気分が乗らない日に無理をすると、イラストそのものが嫌になってしまうことがあります。
描けない日は、好きな作品を見る、資料を集める、過去絵を整理する、次に描きたいテーマを考えるだけでも、制作につながる時間になります。
休みを失敗と考えず、長く続けるための調整として扱うと、数日空いても戻りやすくなります。
イラストの練習は短距離走ではなく、興味を保ちながら少しずつ表現を増やしていく長い取り組みです。
イラストの練習は小さく続けるほど伸びやすい
イラストの練習で最初に大切なのは、難しい理論をすべて理解することではなく、線に慣れ、形を大きく捉え、好きなものを描きながら自分の課題を見つけることです。
初心者は、運筆、アタリ、模写、トレース、一枚絵の完成を順番に経験すると、何が苦手で何を練習すればよいのかが見えやすくなります。
模写や資料を使うことは恥ずかしいことではなく、観察して構造を理解し、自分の絵に戻して試すことでオリジナルを描く力にもつながります。
上達を急ぎすぎると、他人と比べたり、完璧な練習計画を作ろうとしたりして手が止まりやすくなります。
一日十分の線の練習でも、手を一つ描くだけでも、過去の絵を見直すだけでも、描く習慣を切らさずに続ければ、数週間後や数か月後に変化を感じられる可能性が高くなります。



